SSブログ

童子教について [睡夢庵 日々徒然]

【童子教について】

「童子教」とは鎌倉時代から明治中期にかけて普及していた庶民の為の教訓を中心とした中等学習書といえるものです。 最近では死語になっている様ですが“修身”用の教本といえるでしょう。 寺子屋等ではこれと「実語教」、「庭訓往来」、「女今川」といった書を音読、習字教本としていましたので、或る程度の漢文も読める素養を身に付け得たでしょう。

「実語教」に比べ、仏教的色彩が濃いものになっています。 大体7歳から15歳くらい迄を対象とし、子供が身に付けるべき基本的な素養や仏教・儒教の教えが盛り込まれています。

成立年及び著者に関しては不明ですが、現存するもので最も古いものは1377年の書写ですので成立は鎌倉中期以前とされます。 天台宗安然の作という説もあります。

《童子教》

☆ 『偉い人の前に出た際に採るべき態度』
夫貴人前居 顕露不得立 それ貴人の前に居ては 顕露(けんろ)に立つ事を
            得ず
遭道路跪過 有召事敬承 道路に遭うてはひざまづいて過ぎよ 召す事あらば、
            敬ってうけたまわれ

☆ 『尊い人の話を聴く際に採るべき態度』
両手當胸向 慎不顧左右 両の手を胸にあてて向え 慎んで左右を顧みず
不問者不答 有仰者謹聞 問わずんば答えず 仰せあらば謹んで聞け

☆ 『御辞儀の意味を理解する』
三寶盡三禮 神明致再拝 三宝には三度礼を尽くせ、神明には再拝を致せ
人間成一禮 師君可頂戴 人間には一礼を成せ、師君には頂戴すべし

《三法》 仏教用語   仏・法・僧

☆ 『墓地や寺社で採るべき態度』 (神や先祖に対する感謝の念を表す)
過墓時即慎 過社時即下 墓を過ぎるときは即ち慎め やしろを過ぐる時は
            即ちおりよ
向堂塔之前 不可行不浄 堂塔の前にむかって、不浄を行うべからず
向聖教之上 不可致無禮 聖教(尊い教え)の上に向って、無礼をいたす
            べからず

☆ 『人付き合いでの心得』
人倫有礼者 朝廷必在法 人倫礼有れば 朝廷必ず法有り
人而無礼者 衆中又有過 人として礼無き者は 衆中また過(咎)有り

☆ 『友達付き合いで心得るべき事』
交衆不雑言 事畢者速避 衆に交わりて雑言せず 事終わらば速やかに避けよ
触事不違朋 言語不得離 事に触れて友に違えず 言語離るることを得ず
語多者品少 老狗如吠友 言葉多きは品少なし 老いたる犬の友を吠ゆるが如し

☆ 『食べる事よりも大事な事がある』
懈怠者食急 痩猿如貪菓 懈怠する者は食を急ぐ 痩せたる猿の木の実を貪るが
            如し

☆ 『蛮勇の諌め・熟慮断行の勧め』
勇者必有危 夏虫如入火 勇める者は必ず危うき事あり 夏の虫の火に入るが
            如し
鈍者亦無過 春鳥如遊林 鈍き者はまた過ち無し 春の鳥の林に遊ぶが如し

☆ 『悪口・悪行は露見する物』
人耳者附壁 密而勿讒言 人の耳は壁に付く 密かにして讒言する事なかれ
人眼者懸天 隠而勿犯用 人の目は天に懸かる 隠して犯し用うる事なかれ

☆ 『口は災いの元となるので余計な言動は避けよ』
車以三寸轄 遊行千里路 車は三寸のくさびを以って 千里の道を遊行す
人以三寸舌 破損五尺身 人は三寸の舌を以って 五尺の身を破損す
口是禍之門 舌是禍之根 口はこれ禍(わざわい)の門(かど) 舌はこれ禍の根

☆ 『口を謹んで人格を磨く努力をせよ』
使口如鼻者 終身敢無事 口をして鼻の如くならしめば 身を終ゆる迄敢えて
            事なし
過言一出者 駟追不返舌 過言ひとたび出づれば 駟追(しつい)舌を返さず
白圭珠可磨 悪言玉難磨 白圭の珠は磨くべし 悪言の玉は磨きがたし

☆ 『災いは自ら招くもの 人知れず善行を積むべし』
禍福者無門 唯人在所招 禍福は門なし ただ人の招く処にあり
天作災可避 自作災難逃 天の作る災いは避くべし 自ら作る災いは逃れられ
            難し
夫積善之家 必有余慶矣 それ積善の家には 必ず余慶(よけい)あり
亦好悪之処 必有余殃矣 また好悪の処には 必ず余殃(よおう)あり
人而有陰徳 必有陽報矣 人にして陰徳あれば 必ず陽報あり
人而有陰行 必有照名矣 人にして陰行あれば 必ず照名あり

注)
余慶(よけい)    先祖が行った善行がその子孫に幸いを齎す事
余殃(よおう)    先祖が行った悪事の報いが災いとなって子孫に残る事
陰徳陽報/陰行照名  人知れず良い事をするものには必ず目に見える良い報いが
          かえる

☆ 『物事を成し遂げるには信念が大切』
信力堅固門 災禍雲無起 信力堅固の門には 災禍の雲起こる事なし
念力強盛家 福祐月増光 念力強盛の家には 福祐の月の光を増す
心不同如面 譬如水随器 心の同じならざるは面の如し 例えば水の器に従うが
            如し

☆ 『人の疑いを招かぬように、また失敗から学ぶように』
不挽他人弓 不騎他人馬 他人の弓をひかざれ 他人の馬に乗らざれ
前車之見覆 後車之為誡 前車の覆るをみては 後車の戒めとす
前事之不忘 後事之為師 前事を忘れず 後事の師とす

☆ 『自分の名を残す様な生き方を目指す』
善立而名流 寵極而禍多 善立ちて名流れ 寵極まって災い多し
人者死留名 虎者死留皮 人は死して名を留め 虎は死して皮を残す

☆ 『上に立つ人の態度はどうあるべきか』
治国土賢王 勿侮鰥寡矣 国土を治める賢王は 鰥寡(かんか)を侮る事なし
君子不誉人 則民作怨矣 君子の人を褒めざるは 即ち民の怨(あた)となれば
            なり
注)
鰥寡孤独        律令制において国家の救済対象と看做される家族構成
鰥 : 61歳以上の寡婦      寡 : 50歳以上の未亡人
弧 : 16歳以下の父親のない子供 独 : 61歳以上の子供がいない者

☆ 『違う環境に移った時はその環境に合わせる事を忘れるな』
入境而問禁 入国而問国 鏡にいりては禁(いましめ)を問え 国に入りては
            国を問え
入郷而随郷 入俗而随俗 郷にいりては郷に従い 俗に入りては俗に従え

☆ 『先祖を敬おう』
入門先問諱 為敬主人也 門にいりてはまず 諱(いみな)を問え 主人を敬う
            為なり
君所無私諱 無二尊号也 君のところに私の諱なし 尊号二つなければなり

☆ 『近視眼にならず広く周りを見よう』
愚者無遠慮 必可有近憂 愚者は遠き慮りなし 必ず近き憂いあるべし
如用管窺天 似用針指地 管を用いて天を窺うが如し 針を用いて地を指すに
            似たり

☆ 『罰や厳しさから学ぶことを覚えよう』
神明罰愚人 非殺為令懲 神明は愚者を罰す 殺すにあらず懲らしめんが為なり
師匠打弟子 非悪為令能 師匠の弟子を打つは 憎むにあらずよからしめんが
            為なり

☆ 『人としての成長を目指す』
生而無貴者 習修成智徳 生れながらにして貴き者なし 習い修めて智徳となる
貴者必不冨 冨者未必貴 貴き者は必ず富まず 富める者は未だ貴からず
雖冨心多欲 是名為貧人 富めりといえども心に欲多ければ これを名付けて
            貧人とす
雖貧心欲足 是名為冨人 貧なりといえども心に足りと欲せば これを名付けて
            冨人とす

☆ 『正しい師弟関係について』
師不訓弟子 是名為破戒 師の弟子をおしえざるは これを名付けて破戒とす
師呵責弟子 是名為持戒 市の弟子を呵責するは これを名付けて持戒とす
畜悪弟子者 師弟堕地獄 悪しき弟子を養えば 師弟地獄に堕ち
養善弟子者 師弟到仏果 善き弟子を養えば 師弟仏果に到る
不順教弟子 早可返父母 教えに従わざる弟子は 早く父母に返すべし

☆ 『人付き合いに対する注意』
不和者擬冤 成怨敵加害 不和なるものを宥めんと擬すれば 怨敵となって害を
            加う
順悪人不避 緤犬如廻柱 悪人に従いて避けざれば 繋げる犬の柱を廻るが如し
馴善人不離 大船如浮海 善人に馴れて離れざるは 大船の海に浮かべるが如し
随順善友者 如麻中蓬直 善き友に随順すれば 麻の中のよもぎのなおきが如し
親近悪友者 如藪中荊曲 悪しき友に親近すれば 藪の中のいばらの曲るが如し

☆ 『環境を整え学ぶ姿勢を持つ』
離祖付疎師 習戒定恵業 祖を離れ疎師に付く 戒定恵(かいじょうえ)の
            業(わざ)を習い
根性雖愚鈍 好自致学位 根性は愚鈍といえども 好めばおのすから学位に到る

注) 戒定恵 仏道修行に必要な三つの大切な事柄
   戒 : 悪をやめる
   定 : 心の平静を得る
   恵 : 真実を悟る智慧

☆ 『塵も積もれば山という様に学ぶ事も積み重ねが大事』
一日学一字 三百六十字 一日に一字を学べば (年間では)三百六十字
一字当千金 一点助他生 一字は千金に当り 一点他生(たしょう)を助く

☆ 『師弟関係は大事にしよう』
一日師不疎 况数年師乎 一日の師たりとも疎んぜざれば いわんや数年の師をや
師者三世契 祖者一世眤 死は三世(さんぜ)の契り 祖は一世(いつせ)の眤
            (むつび)
弟子去七尺 師影不可踏 弟子七尺を去って 師の影を踏むべからず

☆ 『人格を磨くには』
観音為師孝 宝冠戴弥陀 観音は師孝の為に 宝冠に弥陀を戴き
勢至為親孝 頭戴父母骨 勢至は親孝の為に 頭に父母の骨を戴き
宝瓶納白骨 朝早起洗手 宝瓶に白骨を納め 朝(あした)に早く起きて手を洗い
摂意誦経巻 夕遅寝洒足 意(心)を接して経巻を誦(じゅ)せよ 夕べに
            遅く寝て足を洗い
静性案義理       性を静めて義理を案ぜよ

☆ 『身につく書の読み方・学問への心構えと立ち向かい方』
      習読不入意 習い読めども意(心)に入らざれば
如酔寝諂語 読千巻不復 酔いて寝てむつごとを語るが如し 千巻読むとも復さ
            ざれば
無財如臨町 薄衣之冬夜 財無くして町に臨むが如し 薄衣の冬の夜も
忍寒通夜誦 乏食之夏日 寒に忍んで通夜誦(じゅ)せよ 食乏しき夏の日も
除飢終日習 酔酒心狂乱 飢えを除いて終日習え 避けに酔えば心狂乱す
過食倦学文 温身増睡眠 食過ぎれば学文に倦む 身温かければ睡眠を増す
安身起懈怠 匡衡為夜学 身安ければ懈怠起こる 匡衡(きょうこう)は夜学の
            為に
鑿壁招月光 孫敬為学文 壁を穿ちて月光を招く 孫敬は学文の為に
閉戸不通人 蘇秦為学文 戸を閉じて人を通さず 蘇秦は学文の為に
錐刺股不眠 俊敬為学文 錐を股に刺して眠らず 俊敬は学文の為に
縄懸頸不眠 車胤好夜学 縄を頸に懸けて眠らず 車胤は夜学を好み
聚蛍為燈矣 宣士好夜学 蛍を聚(あつめ)灯火となす 宣士は夜学を好み
積雪為燈矣 休穆入意文 雪を積んで灯火となす 休穆は文に意を入れ
不知冠之落 高鳳入意文 冠の落つるを知らず 高鳳は文に意を入れ
不知麦之流 劉完乍織衣 麦の流れるを知らず 劉完は衣を織ながら
誦口書不息 倪寛乍耕作 口に書を誦して息をせず 倪寛は耕作しながら
腰帯文不捨 此等人者皆 腰に文を帯びて捨てず これ等の人は皆
昼夜好学文 文操満国家 昼夜に学文を好んで 文操国家に満ち
遂致碩学位 縦磨簺振筒 遂に碩学の位に到る 例え簺(さい)を磨きて筒を
            振るとも
口恒誦経論 亦削弓矧矢 口には恒に経論を誦(じゅ)せよ また弓を削り矢を
            矧(は)ぐとも
腰常挿文書 張儀誦新古 腰には常に文書を挿し挟め 張儀新古を誦(じゅ)し
枯木結菓矣 亀耄誦史記 枯木木の実を結ぶ 亀耄史記を誦(じゅ)し
古骨得膏矣 伯英九歳初 古骨膏(あぶら)を得たり 伯英は九歳にして初め
早至博士位 宋吏七十初 早く博士の位に至る 宗吏七十にして初め
好学登師伝       学を好んで師伝に上る

注)
経論  : 三蔵(経蔵・律蔵・論蔵)の内、経蔵と論蔵を指す
経蔵  : 仏陀の教説集
律蔵  : 教団の実践規定集
論蔵  : 経に対する注釈文献

☆ 『智者と愚者の異なり』
      智者雖下劣 智者は下劣と雖えども
登高台之閣 愚者雖高位 高台の閣に登る 愚者は高位なりと雖えども
堕奈利之底 智者作罪者 奈利の底に堕つ 智者の作る罪は
大不堕地獄 愚者作罪者 大なれど地獄に堕ちず 愚者の作る罪は
小必堕地獄 愚者常懐憂 小さけれど必ず地獄に堕つ 愚者は常には憂いを抱く
譬如獄中囚 智者常歓楽 例えば獄中の囚(人)の如し 智者は常に歓楽す
猶如光音天       なお光音天の如し

注)
奈利  : 地獄、奈落
光音天 : 三界(欲界、色界、無色界)の内、色界18天の内下位から6番目
      色界第二禅の3番目の天、極光浄天ともいう。
      この天は音声が無く何かを語ると口から浄らかな光を発し言語の
      代わりをなすという

☆ 『両親への感謝の気持ちを忘れるな』
      父恩者高山 父の恩は山よりも高く
須弥山尚下 母徳者深海 須弥山尚下(ひく)し 母の徳は海よりも深く
滄溟海還浅 白骨者父淫 滄溟海還って浅し 白骨は父の淫
赤肉者母淫 赤白二諦和 赤肉は母の淫 赤白二諦和して
成五体身分 処胎内十月 五体身分となる 胎内に処(い)ること十月
身心恒苦労 生胎外数年 身心恒に苦労す 胎外に生じて数年
蒙父母養育 昼者居父膝 父母の養育を蒙る 昼は父の膝に居て
蒙摩頭多年 夜者臥母懐 摩頭蒙ること多年 夜は母の懐に臥して
費乳味数斛 朝交于山野 乳味を費やすこと数斛 朝には山野に交わり
殺蹄養妻子 暮臨于江海 蹄を殺して妻子を養い 暮れには江海に臨み
漁鱗資身命 為資旦暮命 鱗を漁(すなど)って身命を資(たす)く
            旦暮の命を資けん為なり
日夜造悪業 為嗜朝夕味 日夜悪行を造る 朝夕の味わいを嗜まんが為なり
多劫堕地獄 戴恩不知恩 多劫地獄に堕つ 恩を戴いて恩を知らずは
如樹鳥枯枝 蒙徳不思徳 樹の鳥が枝を枯らすが如し 徳を蒙って徳を思わ
            ざるは
如野鹿損草 酉夢打其父 野の鹿の草を損ずるが如し 酉夢その父を打つ
天雷裂其身 班婦罵其母 天雷その身をを裂く 班婦その母を罵る
霊蛇吸其命 郭巨為養母 霊蛇その命を吸う 郭巨母を養わんが為に
掘穴得金釜 姜詩去自婦 穴を掘れば金の釜を得たり 姜詩自婦を去って
汲水得庭泉 孟宗哭竹中 水を汲めば庭に泉を得たり 孟宗竹の中で哭けば
深雪中抜筍 王祥歎叩氷 深雪の中筍を抜く 王祥歎いて氷を叩けば
堅凍上踊魚 舜子養盲父 堅凍の上に魚踊る 舜子盲父を養い
涕泣開両眼 刑渠養老母 涕泣せしかば両眼の開く 刑渠老母を養い
噛食成齢若 董永売一身 食を噛めば齢若くなる 董永一身を売って
備孝養御器 楊威念独母 孝養の御器に備う 楊威独り身の母を思い
虎前啼免害 顔烏墓負土 虎の前に啼いて害を免る 顔烏墓に土を負えば
烏鳥来運埋 許牧自作墓 烏鳥来たりて運び埋める 許牧自ら墓を作れば
松柏植作墓 此等人者皆 松柏生じて墓となる これ等の人は皆
父母致孝養 仏神垂憐愍 父母に孝養を致し 仏神憐愍を垂れ
所望悉成就       望む処悉(すべから)く成就す

☆ 『命の儚さ、命の尊さを知るべし、冨や名誉、権力も来世には意味がない』
      生死命無常 生死の命は無常なり
早可欣涅槃 煩悩身不浄 早く涅槃を欣(よろこ)ぶべし 煩悩の身は不浄なり
速可求菩提 厭可厭娑婆 速やかに菩提を求むべし 厭(いと)うても厭う
            べきは娑婆なり
会者定離苦 恐可恐六道 会者定離の苦しみ 恐れても恐るべきは六道なり
生者必滅悲 寿命如蜉蝣 生者必滅の悲しみ 寿命は蜉蝣(かげろう)の如し
朝生夕死矣 身体如芭蕉 朝に生じ夕べに死す 身体芭蕉の如し
随風易壊矣 綾羅錦繍者 風に随って壊れ易く 綾羅錦繍は
全非冥途貯 黄金珠玉者 全く冥途の貯えにあらず 黄金珠玉は
只一世財宝 栄花栄耀者 只一世の財宝 栄花栄耀は
更非仏道資 官位寵職者 更に仏道の資(たすけ)にあらず 官位寵職は
唯現世名聞 致亀鶴之契 只現世の名聞 亀鶴の契りを致し
露命不消程 重鴛鴦之衾 露命消えざる程 鴛鴦の衾(ふすま)を重ぬるも
身体不壊間 忉利摩尼殿 身体壊れざる間 忉利摩尼殿も
歎遷化無常 大梵高台閣 遷化無常を歎く 大梵高台の閣も
悲火血刀苦 須達之十徳 火血刀の苦しみを悲しみ 須達の十徳も
無留於無常 阿育之七宝 無常を留むる事なし 阿育の七宝も
無買於寿命 月支還月威 寿命を買う事なし 月支(ぐはつし)が月を還せし
            威も
被縛琰王使 龍帝投龍力 琰王の使いに縛られ 龍帝龍を投げる力も
被打獄卒杖       獄卒の杖に打たるる

注)
六道  : 天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道
      仏教では心の状態(迷い)としてこの六道の輪廻と説く
火血刀 : 地獄・畜生・餓鬼の三悪道をいう
須達  : 中インド舎衛城の長者 釈迦に帰依し祇園精舎を献じた
琰王  : 唐第六代皇帝玄宗の四男 李琰

☆ 『心を込めた施しをしよう』
      人尤可行施 人尤も施しを行うべし
布施菩提粮 人最不惜財 布施は菩提の粮(糧) 人最も財を惜しまざれ
財宝菩提障 若人貧窮身 財宝は菩提の障り もし人貧窮の身にして
可布施無財 見他布施時 布施すべき財無くば 他の布施するを見る時
可生随喜心 悲心施一人 随喜の心を生ずべし 心に悲しみて一人に施せば
功徳如大海 為己施諸人 功徳は大海の如し 己が為に諸人に施せば
得報如芥子       報いを得ること芥子の如し

☆ 『小さな努力でもいつか報われる時が来る』
      聚砂為塔人 砂を集めて塔をなす人
早研黄金膚 折花供仏輩 早く黄金の膚を研く 花を折りて仏に供する輩
            (ともがら)は
速結蓮台趺 一句信受力 速やかに蓮台の趺(あなうら)を結ぶ 一句信受の力
超転輪王位 半偈聞法徳 転輪王の位を超(いた)る 半偈聞法の徳
勝三千界宝       三千界の宝に勝れり

☆ 『悟りへの道はあらゆる人の前に開かれている』
      上須求仏道 上は須く仏道を求む
中可報四恩 下偏及六道 中は四恩に報(ほう)ずべし 下は偏(ひとえ)に
            六道に及ぶ
共可成仏道       共に仏道なるべし

注)
四恩  : 国王の恩、父母の恩、師友の恩、施主の恩(三宝の恩)

☆ 『この書の目的について』
      為誘引幼童 幼童を誘引せん為
註因果道理 出内典外典 因果の道理を註す 内典外典より出でたり
見者勿誹謗 聞者不生笑 見るもの誹謗するなかれ 聞く者笑いを生ぜざれ



共通テーマ:日記・雑感