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電脳環境: スタイラス交換-その後1 [睡夢庵の電脳環境]

【電脳環境: スタイラス交換-その後1】

新しいスタイラスに交換してチョイ聴きをしながら、前回の記事を作ったのですが・・・ その時は新しい針に変えて音が悪くなる事はないだろう・適正針圧範囲内それも中央値付近ならば悪くはならないだろうという予断と期待を持って聴いていましたが、その音、どちらも段々納得出来なくなり、レファレンスをV-15に代える予定をDL-103Sのままにしていました。

ここ3日再度新旧スタイラスの聴き比べを行いましたが、やはり以前の様な音色が再現できていないという結論に達しました。
V-15 がレコードによっては歪みッぽく聴こえるタイミングがあって、果たして旧と同じ針圧でいいのか?という疑問が湧いてきたのも一つです。

V-15 TYPEⅢ 純正品  VN-35MR  0.75-1.5g 超楕円針
VN-35E0.75-1.5g 楕円針
1000ZE/X 純正品S-1000ZEX 0.25-1.25g 楕円針

まさか適正針圧が違う? そういえばケースの底に使用説明書が挟んであったなと思い取り出してみるとこれが・・・

VN-35E 1.0-1.5g
S-1000ZE/X1.0-1.5g

正直な処そんな馬鹿な、です。 適正針圧範囲が変わるという事はサスペンションやダンパーの特性が異なる事を意味しますから、当然、その範囲が異なればまったく音が変わってしまうでしょう。 これを互換というの?ですね。 出力電圧、出力周波数特性も誤差率で表せるレベルじゃないと互換とはいえないのでは?です。 これだけ耳で違えば目で見ても分かる位のレベル差が出るだろうと判断し、音だけでなく波形の確認を行う事にしました。

《基本的な新旧で相違する印象》

V-15 TYPEⅢ
・ クリアな高域の伸びと締まった低域が失われた。
・ 1000ZE/X との明確だった性格差が薄れた。
・ ピアノなどの強いアタックが入ると歪みやすい。

1000ZE/X
・ 艶やかな高域と豊かな低域(すこしダルな)が失われた。
・ 弦の倍音が乏しくなった様に感じる。
・ ピアノでは華美な印象が引っ込んだ。

《SHURE V-15 TYPEⅢ》比較
・ カラヤン 弦楽の精髄 モーツァルト K546 冒頭
 - VN-35MR 純正旧品 1.0g +をおして5に設定

 - VN-35E A'pis製  1.0g

 - VN-35E A'pis製  1.3g

・ ポリーニ シューベルト さすらい人幻想曲 冒頭
 - VN-35MR 純正旧品 1.0g +をおして5に設定

 - VN-35E A'pis製  1.0g

 - VN-35E A'pis製  1.3g


《EMPIRE 1000ZE/X》比較
・ カラヤン 弦楽の精髄 モーツァルト K546 冒頭
 - S-1000ZE/X 純正旧品 0.8g +をおして5に設定

 - S-1000ZE/X A'pis製  0.8g

 - S-1000ZE/X A'pis製  1.3g

・ ポリーニ シューベルト さすらい人幻想曲 冒頭
 - S-1000ZE/X 純正旧品 0.8g +をおして5に設定

 - S-1000ZE/X A'pis製  0.8g

 - S-1000ZE/X A'pis製  1.3g


☆ 弦楽系での比較
《ソース カラヤン/ベルリンフィル モーツァルト K546》

 - VN-35MR/S-1000ZEX 純正同士(赤:35MR=1.0g/紫:ZEX=0.8g)
k546_org.jpg
   純正品は吃驚する位よく似たピーク波形を見せています。 やはり良い特性ですね。
 - VN-35E/S-1000ZEX K'pis製同士(赤:35E=1.3g/紫:ZEX=0.8g)
k546_new.jpg
   K'pis製は特にがっかりなのはS-1000ZEX高域の落ちの早い事、これでは弦の倍音は消えてしまいますので響き、艶が乏しくなったと感じるでしょうね。 可聴域についてはほぼ満足出来る特性は持っている様ですが、それだけではカートリッジの持つカラーは出て来ないでしょう。
 - VN-35MR 1.0g/VN-35E 1.0g(赤:35E=1.0g/紫:35MR=1.0g)
k546_s_10_cmp.jpg
   弦主体では殆ど差がありません。
 - VN-35MR 1.0g/VN-35E 1.3g(赤:35E=1.3g/紫:35MR=1.0g)
k546_s_13_cmp.jpg
   1.3gにすると低域が厚くなる代わりにちょっと高域が薄くなります。
 - S-1000ZEX純正 0.8g/A'pis製 0.8g(赤:A'pis製=1.0g/紫:EMPIRE製=0.8g)
k546_E_08_cmp.jpg
   高域の落ち込みが早いこととなぜか20KHz以上がすこし持ち上がっています。
 - S-1000ZEX純正 0.8g/A'pis製 1.3g(赤:A'pis製=1.0g/紫:EMPIRE製=0.8g)
k546_E_13_cmp.jpg
   0.8gに比べ高域の落ち込みが一層激しくなりますので、純正の広がりと艶がある弦の音色が細身になってしまいます。

☆ ピアノでの比較=強い打鍵(アタック)への反応
《ソース ポリーニ/シューベルト さすらい人幻想曲》

 - VN-35MR/S-1000ZEX 純正同士(赤:35MR=1.0g/紫:ZEX=0.8g)
Porllini_org.jpg
   35MR アタックでスタイラスが踊ったようで、妙な波形が出ています。 1000ZEXでは響きが過剰に感じますが、0.8gではトラッキングし切れていないのかもです。 ピアノはこれで聴かないので薄々これを感じながら0.8gで常用してきました。
 - VN-35E/S-1000ZEX K'pis製同士(赤:35E=1.3g/紫:ZEX=0.8g)
Porllini_new.jpg
   A'pis製のVN-35Eはピアノに素直に反応している様が見て取れます。 1000ZEXの方は0.8gではやはりアタックに反応しきれていません。
 - VN-35MR 1.0g/VN-35E 1.0g(赤:35E=1.0g/紫:35MR=1.0g)
Pollini_s_10_cmp.jpg
   MRの方はガタの影響が出ている。 35Eの方は1.0gではアタックに耐えられず妙な触れが出ている。
 - VN-35MR 1.0g/VN-35E 1.3g(赤:35E=1.3g/紫:35MR=1.0g)
Pollini_s_13_cmp.jpg
   1.3gではアタックにも乱れず、高域全体がすっきりしまったが、純正の様な煌びやかさはない。
 - S-1000ZEX純正 0.8g/A'pis製 0.8g(赤:A'pis製=0.8g/紫:EMPIRE製=0.8g)
Porllini_E_08_cmp.jpg
   同じ0.8gでは低域の響きが薄れるが、弦の艶も純正程はないがそこそこ。
 - S-1000ZEX純正 0.8g/A'pis製 1.3g(赤:A'pis製=1.0g/紫:EMPIRE製=0.8g)
Porllini_E_13_cmp.jpg
   1.3gでは高域の落ちが一段と強くなる様で、枯れた音になる。

波形も抱いた印象を裏付けるものと言える様です。

やはりあくまで代用品でしかなかったことが露呈された? 純正品のK546での波形を見て頂ければ歴然ですね。 SHURE/EMPIRE 双方の純正品の波形は吃驚する程一致しています。 これは双方共に周波数特性が良く、且つ近似している事を示しています。 それでも聴感上はSHUREは各社のグランド・ピアノをそれらしく聴かせてくれますが弦・管は余り得意では・・・、EMPIREはチェロ、ヴァイオリン、トランペットなどを色合い豊かに表現するが・・・等得て不得手があります。 基本的な周波数特性ではっきり分かる差異が出たのではこの辺りを云々する以前であり、それでは同じカートリッジを同じ様に歌わせる事は出来ないでしょう。 といってもカートリッジ・メーカーの純正でも確かに当たり外れがあるといいますので、どこまで許容出来るか・・・

この確認をしていて一番のショックは V-15 TYPEⅢ が駄目になってしまった事です。 音が出ないという意味ではありませんが、A'pis製のスタイラスのシェル部分の製作精度が悪いのか、純正に戻すとルーズになっていて、その影響がモロに音に出てしまう様になってしまいました。 シェルのフィンガーに触る音すら拾ってしまうのですから・・・他の互換品ももう取り付けられないでしょうから、好きだったこのカートリッジのピアノの音を諦めなければならないですね。

JICO のサイトに S-1000ZE/X がなかったので、A'pis を選んだのですが、JICOの S-1000ZE/X 対応品がYahoo! オークションには出ています。 一体これはどういうこと?流通在庫なんでしょうか。 メーカーから直買いしようと考えたのが失敗の元になってしまいました。 ま、JICO製も大同小異の可能性もありますが。

今まで私自身は経験がありませんが、純正でも当たり外れがあると言われる交換針の世界ですので互換品を諦め、新しいカートリッジを買うかです。 しかし、昔の様に情報を持ちませんし、こればかりは人の話は役に立ちません。 昔はアナログの時代でしたので、数軒オーディオ・ショップやレコード・ショップを廻り、店長クラスと仲良くなると持ち込んだ/買ったレコードと一緒に聴き比べが出来ましたもので、気になっているカートリッジに巡り会える機会もあり、音も確かめられていましたが・・・一切その音を知らぬまま買う? 悩ましい所です。

メーカーが言う針先の寿命は

・ 丸針    約200時間
・ 楕円針   約150時間
・ シバタ針  約400時間
・ 超楕円針  約400時間
・ SAS針  約500時間 といいます。

メーカー外の方はこの約倍を目安に交換すれば充分ともいいます。

一代前の純正品で再生したレコード枚数は

・ SHURE VN-35MR      超楕円針  LP約600枚
・ EMPIRE S-1000ZE/X楕円針LP約200枚
・ DENON DL-103S楕円針LP約150枚
・ Ortofon SPU-GT丸針LP約100枚
・ Fidelity-Research FR5-EXシバタ針LP約50枚

こんな所ですから、ダンパー劣化を無視すればまだ一応寿命の内と考えられますので、周波数特性的には最もフラットな FR5-EX をレファレンスにして、他は使い分けでとも・・・
当面はエージングの積りで、VN-35E 1.3g で V-15 TYPEⅢ をメインにして使ってみます。 どうしても気に入らねばお蔵入りにするしかありませんが(TT) その前に銅箔テープで前の針を固定して騙せるか実験してみますか。


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